コロニアル(スレート瓦・カラーベスト)に適したリフォーム方法

カバー工法とは主にコロニアルの上に、軽い金属屋根を重ね張りする屋根のリフォーム方法のひとつです。
※金属屋根を重ね張りする前には下葺き材(防水シート・ルーフィング)を張る必要があります。
コロニアルとは厚さ5mm程度の薄く平べったいスレートが主成分の屋根仕上げ材です。
コロニアルは「スレート系屋根材」「軽量スレート 」「化粧スレート 」「薄型スレート 」「スレート瓦 」「カラーベスト 」ともよばれています。
コロニアルはケイミュー(旧クボタ松下電工外装)が取り扱うスレート系屋根材の“商品名”です。
ケイミューは屋根材と雨どいで圧倒的なシェアを占めるトップメーカーです。
コロニアルは大量に流通しており、現在ではスレート屋根そのものを示す言葉になっています。
商品名が一般名詞化しています。
屋根の仕上げ材にはたくさんの種類があります。
しかし、屋根カバー工法は全ての屋根材で適用はできません。
たとえば、重い陶器瓦の屋根の上に新たに屋根材を張ることはできません。
コロニアルについて詳しくはこちら
ルーフィング(防水シート)について詳しくはこちら

ルーフィング防水シート

カバー工法が広がった背景

コロニアルは30年を過ぎると屋根材としての機能が低下し、本格的な改修工事が必要になるとメーカーからアナウンスされています。
30年は維持するというわけではなく、環境の影響や商品自体の問題で、10年程度で改修工事が必要になることもあります。
つまり、コロニアルはあまり長持ちしない屋根ということです。
コロニアルの改修工事のひとつに、既存のコロニアルを剥が屋根を張り替える「葺き替え工事(ふきかえ)」があります。
しかし、葺き替え工事は剥がす手間賃や工期がかさみみます。
このような背景の中、既存のコロニアルの上に軽量の屋根材を張る「カバー工法」が開発されました。
カバー工法は「重ね葺き」「重ね張り」「被せ張り」「被せ工法」ともよばれています。
コロニアルのリフォーム工事において、カバー工法は最もスタンダードな工事方法として認められています。
なお、カバー工法で上に重ねて張る屋根材にも条件があります。
最も重要な条件は「軽さ」です。
カバー工法をおこなうことで屋根材が2重に仕上がるので、耐震性に十分な注意を払う必要があります。
そのため、最も軽量の屋根材である「金属屋根」がカバー工法で仕上げる屋根材として最も多く使われます。
金属屋根は屋根瓦のフォルムに加工された成型ガルバ(成型ガルバリウム鋼板屋根)が人気です。
いわゆるメーカー加工品のことで、代表的な商品としてはアイジー工業の「スーパーガルテクト」やニチハの「横暖ルーフα」などがあげられます。
なお、カバー工法には金属屋根以外は使えないということはありません。
たとえば、ケイミューの「ルーガ(樹脂混入繊維補強軽量セメント瓦)」や旭ファイバーグラスの「リッジウェイ(アスファルトシングル)」などを用いて重ね葺きすることもできます。
ガルバリウム鋼板屋根について詳しくはこちら
ケイミュー ルーガについて詳しくはこちら

結局 屋根カバー工法は良いのか 悪いのか

カバー工法は良い?悪い?
お客様から「屋根カバー工法は良くない」と言われることがあります。
結論を先に伝えると、予算があるお客様には「葺き替え」を定額屋根修理はおすすめします。
葺き替えがベストであるのは言うまでもありません。
葺き替えをすることで屋根全体が軽くなり、リフレッシュします。
しかし、屋根のリフォーム費用はとても高額です。
屋根の葺き替えリフォームはカバー工法に比べて1.3倍から1.5倍程度、リフォーム費用が高額になります。
問題は予算だけではありません。
剥がす手間があるため、工期も長くなります。
もしコロニアルがアスベスト入りであった場合、アスベスト対策をおこなう必要があります。
そして比較的新しい木造住宅の場合、既存コロニアルを留める釘が強固に打たれています。
葺き替えで無理にコロニアルを剥がそうとすると、下地や垂木(たるき)、構造材を痛める結果を招きます。
デメリットを考えるとカバー工法は合理的な工事方法であり、コロニアルのリフォームでは第1選択になる工事方法です。

カバー工法を否定する業者

屋根カバー工法に対して否定的な見解を示す会社もいます。
「瓦屋根の工事業者」や「火災保険の申請代行会社」はカバー工法を否定する傾向があります。
彼らがカバー工法を否定するには理由があります。
たとえば、瓦屋根の工事業者は「金属屋根の工事」を専門としていません。
金属屋根を張ることを本業とするのは「板金工事会社」です。
瓦屋根の工事業者と金属屋根の工事業者は互いに競合し、共にライバルのような存在です。
そのため、瓦屋根の工事業者はコロニアルのカバー工法を否定し、自社で施工ができる「コロニアルへの葺き替え」などをお客様にすすめる傾向があります。
インターネット上でも「瓦屋根の工事業者」や「瓦屋根販売会社」によるカバー工法の否定的な見解が散見されています。
一方の火災保険の申請代行会社は「火災保険会社への修理費用申請」と「屋根修理工事」をセットで請け負う会社です。
保険会社は風災にあった屋根の「部分修理」は認めますが、カバー工法のような屋根の「全体改修」は認めません。
あくまでも被災した部分の「現状回復」や「被災部位の修繕」が保険の対象になります。
もし、火災保険の代行申請会社が「火災保険を使って0円修理」と宣伝している場合、火災保険の申請代行会社はカバー工法による屋根改修工事が提案できなくなります。(提案をしません。)
したがって、災保険の申請代行会社はカバー工法に対してネガティブな情報を発信する傾向があります。
ネガティブな情報だけで判断することはないようにしましょう。

コロニアルメーカーもカバー工法専用屋根材を提供

カバー工法で使われる金属屋根について

これまで、コロニアルを取り扱うメーカーはカバー工法を反対していました。
自社商品の上に他社商品を重ね張りされても何の利益にもなりません。
勝手に自社商品の上に屋根を重ねられてクレームでも言われるものなら、たまったものではありません。
しかし、カバー工法は極めて合理的なリフォーム方法です。
さらに、世の中には軽くて耐久性の高い金属屋根が開発されました。
ガルバリウム鋼板屋根です。
この優れたガルバリウム鋼板屋根材が登場したことで、カバー工法が瞬く間に普及しました。
ガルバリウム鋼板屋根を用いたカバー工法が広がり既に20年以上年月は経過しています。
順調に実績も重ねており、有用性も専門家より十分検証されています。
ケイミューもカバー工法の有用性を認めており、2017年にはこれまで取り扱いのなかった金属屋根も販売するに至っています。
経済産業省管轄の住宅産業協議会でも金属屋根によるカバー工法は認めています。
今ではカバー工法はコロニアルの最もスタンダードなリフォーム方法として確立しています。

カバー工法を推奨している会社・機関(ごく一部のご紹介です)

大手リフォーム会社
・積水ハウスリフォーム株式会社  ・トヨタホームリフォーム株式会社  ・ダイワハウスリフォーム株式会社
コロニアル製造会社
・ケイミュー株式会社
金属屋根瓦製造会社
ニチハ株式会社
第三者機関 その他
住宅産業協議会  ・一般社団法人 日本金属屋根協会  ・一般社団法人 日本屋根診断士協会   ・オールアバウト

カバー工法のメリット

工事費用を抑えることができる

屋根材を撤去する人件費や廃材処理費もかからないので、工事費用を安く抑えることができます。
4-2.屋根の断熱性が向上する
金属屋根裏面にある断熱材が防音性を高め、断熱性を向上させます。(注:断熱性がない製品もあります。)
加えて、屋根が2重になるため、更に断熱性や防音性、防水性が向上します。

工期が短くなる

撤去や養生をする必要がないため、通常の工事日数より2日から4日短縮されます。
葺き替え工事の約半分の日数でリフォームができます。

アスベスト対策になる

2004年(平成16年以前)以前に製造されたスレート屋根材はアスベストが含まれています。
癌(特に肺がん)を誘発するとして、現在ではアスベスト含有屋根材の使用・製造・販売は禁止されています。
アスベストの撤去には特別な資格が必要な上、多額の処分費用もかかります。
アスベストが近隣に飛散、拡散しないための養生費もかかります。
カバー工法で既存の屋根を残しておけば、アスベストが飛び散る心配はありません。

カバー工法のデメリット

屋根が少し重くなります

カバー工法を実施することで、屋根は重くなります。
しかし、軽量の金属屋根によるカバー工法であれば屋根の重さをそれほど心配することはありません。
軽量金属屋根は5kg/㎡です。
一般的なコロニアルに金属屋根材でカバー工法を行った場合、屋根の総重量は約23~26kg/㎡になります。
陶器瓦(日本瓦)の屋根は約60kg/㎡であり、陶器瓦の屋根に比べてはるかに軽量です。

既存の野地板(のじいた)は古いまま

カバー工法は既存の屋根と野地板を再利用し、その上に軽い金属屋根を重ね張りする工事です。
そのため、既存の野地板自体はリフレッシュされません。
もちろん、野地板にも寿命があります。
特に結露の影響が受けやすい環境下の場合、野地板が傷みやすいです。
結露の影響が懸念される場合は、カバー工法をおすすめできません。

カバー工法をおこなうための「前提条件」

既存屋根材の条件は?

全ての屋根材にカバー工法が適応するとは限りません。
屋根カバー工法ができる屋根材は以下の通りです。
カバー工法ができる(軽量の屋根材を重ねることができる)屋根材
コロニアル・アスファルトシングル
コロニアルやアスファルトシングルの上に新たに軽い屋根材を重ねることは基本的に可能です。
カバー工法をおすすめしない屋根材
金属屋根(トタン瓦棒・成型ガルバ)
トタン瓦棒屋根へのカバー工法は可能ですが、定額屋根修理ではほとんどおこなうことはありません。
リフォームが必要なトタン瓦棒屋根の現場は、屋根そのものがすでにボロボロになっている(時すでに遅しである)ことがほとんだからです。
ボロボロの屋根の上にカバー工法をおこなっても、近い将来、再び屋根の改修が必要になるリスクが残ります。
野地板(のじいた)を増し張りするなどの下地調整をおこなってカバー工法をすることも可能ですが、費用対効果を考えると金属屋根は葺き替え工事が一番おすすめです。
トタン瓦棒屋根の葺き替え工事に関して詳しくはこちら
カバー工法ができない屋根材
瓦(陶器瓦・日本瓦・セメント瓦)
日本瓦の葺き替え工事に関して詳しくはこちら
瓦(陶器瓦・日本瓦・セメント瓦等)は屋根材に厚みや波があるため、カバー工法によるリフォームができません。基本的には葺き替え工事になります。

重ねる屋根材条件は?

新しく上に葺く屋根材は軽量であることが最も重要な条件になります。
「成型ガルバリウム鋼板」「ガルバリウム瓦棒」「立平」「アスファルトシングル」などが使用できます。
よくご質問いただきますが、コロニアルの上に新しいコロニアルを重ね葺きすることはできません。
メーカーが認めていません。

屋根劣化状況の条件は?

既存の屋根が激しく劣化している場合、カバー工法を行うことができません。
たとえば、コロニアル劣化の特徴のひとつに、含水があげられます。
水を含んでブヨブヨになったコロニアルは下地として機能せず、釘を打ち込むことができません。
劣化が進んでからカバー工法をおこなうのはできない場合があります。
カバー工法をおこなうタイミングは「ある程度屋根の状態が良い時」とも言い換えられます。
特に建築後30年以上が経過している屋根はできるだけ早い時期にカバー工法を検討してください。

カバー工法は板金工事会社に依頼する

屋根カバー工法は金属屋根を重ねて張る工事になります。
そのため、工事は「金属屋根の工事会社」、つまり「板金工事会社」に依頼してください。
よく間違われますが、カバー工法は「瓦屋根の工事会社」がおこなう工事ではありません。
より安く、より専門的な工事の提案を望まれるお客様は「板金工事会社」を探して工事のご相談をしてください。

2つの屋根カバー工法

2つの屋根カバー工法
屋根カバー工法には2つの工事方法があります。
「直接下葺き材張りカバー工法」と「野地板(のじいた)増し張りカバー工法」です。
「直接下葺き材張りカバー工法」は既存屋根の上に「下葺き材」と「屋根本体」を張る工事方法です。
「野地板増し張りカバー工法」は既存屋根の上に「野地板」と「下葺き材」「屋根本体」を張る工事方法です。
「直接下葺き材張りカバー工法」は既存コロニアルの上に「下葺き材」と「屋根本体」を張る工事方法です。
「野地板増し張りカバー工法」は既存コロニアルの上に「野地板」と「下葺き材」「屋根本体」を張る工事方法です。
一般的には手間が少ない「直接下葺き材張りカバー工法」を採用します。
しかし、既存コロニアルや野地板の劣化が進んでいる場合は「野地板増し張りカバー工法」を採用します。

既存野地板の劣化チェック

カバー工法は既存コロニアルや既存野地板を下地材として再利用する工事方法です。
そのため、既存野地板が良好な状態であることがカバー工法の前提条件になります。
その既存野地板の劣化状況や強度を確認する方法が用意されています。
検査方法には「簡易検査」と「機械検査」2つがあります
いずれも屋根に穴をあけて調べる道具を用います。
屋根に穴をあけてまで調べるのが困難な場合は目視や築年数で工事方法を判断します。
カバー工法実施についての時期的な目安は下記の通りです。
・建築後20年前後「直接下葺き材張りカバー工法」を検討
・建築後30年以上「野地板増し張りカバー工法」を検討
・建築後40年以上もしくは雨漏りを放置して内部構造材が腐食している場合「葺き替え」を検討

カバー工法後のメンテナンス

ガルバリウム鋼板の再塗装について

成型ガルバリウム鋼板のメーカー保証は「塗膜15年」「赤錆25年」が基本です。
「塗膜20年保証」のハイグレード製品もあります。
通常品はメーカーから15年ごとに再塗装が推奨されています。
塗装はあくまでも美観維持のためのものになります。
必ず実施しなければならないものではありません。
金属屋根は塗膜の劣化や色あせよりむしろ「錆」と「穴あき」に注意をしてください。「錆による穴あき」が雨漏りに直結する不具合になります。

成型ガルバリウム鋼板の葺き替えについて

メーカーカタログでは30年を目安にガルバリウム鋼板屋根は葺き替えを検討すると記載されています。
この30年という数値はコロニアルの改修スケジュールと同じです。
それではガルバリウム鋼板とコロニアルは耐用年数が同じかというと、そんなことはありません。
この2つの製品の耐用年数の違いは、メーカー保証年数から推し量ることができます。
たとえば、コロニアルの製品保証は「2年」ですが、ガルバリウム鋼板屋根の製品保証(穴あき保証)は「25年」です。
同じような改修スケジュールにもかかわらず、ガルバリウム鋼板屋根のほうが10倍以上の保証期間が設けられています。
あくまでもこの30年という数字はメーカー側がリスクを回避するための担保の数字としてとらえてください。
実際、ガルバリウム鋼板はコロニアルに比べて劣化しにくく、短期間で再改修の必要性を迫られる可能性は低いです。
ガルバリウム鋼板屋根は30年以上の耐久性が期待できる屋根材と弊社では考えています。

屋根カバー工法の流れ 工事方法

屋根カバー工法の施工手順のご紹介です。

足場をかけます

ご紹介する建物はアパートです。まずはじめに足場を組み立てます。
安全と作業効率を確保するために、足場は必ず要します。

下葺き材を張ります

既存コロニアルの状態が良好であったため、今回の現場では「直接下葺き材カバー工法」で工事を行いました。
既存コロニアル屋根の上に直接、下葺き材(ルーフィング)を貼ります。
下葺き材にはたくさんの種類があるので、カバー工法で使う下葺き材も慎重に選ぶ必要があります。
下葺き材(ルーフィング)について詳しくはこちら
もし既存コロニアルや野地板の劣化が進行している場合は、コロニアルの上に野地板を増し張りする「野地板増し張りカバー工法」を採用します。

屋根本体を張ります

下葺き材の上にガルバリウム鋼板を軒先から張ります。
使用したのはアイジー工業の「スーパーガルテクト」です。

完成です

ガルバリウム鋼板は耐久性が高く、軽量で耐震性に優れた屋根材です。
カバー工法に最適な屋根材です。
テイガク屋根修理では屋根カバー工法の工事価格も公開しています。
屋根カバー工法工事価格はこちら

屋根カバー工法の費用・価格

テイガク屋根修理では屋根カバー工法の工事金額を公開しています。
記載の単価で計算した工事金額以下にお見積価格は必ずなります。
各工事項目 工事価格
1足場工事 750円/㎡
2下葺き材(改質ゴムアスファルトルーフィング) 600円/㎡
3ガルバリウム鋼板(断熱材付一体型) 6,500円/㎡
4各種板金工事 1,500円~5,000円/m
5工事管理費(諸経費等) 15,000円/日
なお、上記価格表示は消費税を除いています。